顎関節症における矯正治療とは(1)

顎関節症は、一般の方でもよく耳にするようになってきたようですが、実際にその疾患がどのような影響があるのか知られるようになってきたとはまだ言いがたいかもしれません。

患者さんが「自分は顎関節症かも?」と気がつくきっかけは、「口が開きにくい」、「しゃべっていると顎が疲れる」、「顎がだるい」、「ものを食べると疲れる」といった症状ではないでしょうか?

また、少しひどくなってきて「顎のポキポキ鳴る」、といった不快な症状から「顎からジャリジャリといった音がする」といった症状へ変わり、「次第にものが噛みにくくなり」、「頭痛や目の痛み」までてくるころに慌てて歯医者さんを探す人も結構いらっしゃるでしょう。

いずれも、本人が自覚しやすい症状です。しかし、顎関節症のなかには、「不定愁訴」と呼ばれ、病院に行っても、原因も治療法もわからない多種多様の症状を引き起こすものも少なくないのです。こちらは症状も多種多様で本人も顎関節症と自覚するのが難しく、その上、先ほど挙げました顎関節症より重い症状になることがほとんどです。

具体的に、噛み合わせの治療で改善するかもしれない、顎関節症と考えられる「不定愁訴」の症状には以下のようなものがあり、実際には「こんな症状まで?」と思ってしまうようなものまで歯と噛み合わせが関係しているのです。

・呼吸に関するもの

「睡眠時無呼吸症候群」、「呼吸が浅い」、「動悸、息切れ」

・身体の症状に関するもの

「頭痛」、「指の関節などのむくみや痛み」、「手足の関節の痛み、違和感」、「股関節の痛み」、「背中や肩甲骨の痛み」、「ひどい生理痛」

・思考や、やる気に関するもの

「疲れやすい」、「ネガティブな思考」、「怒りやすい」、「情緒不安定」

・顔の症状に関するもの

「顔面チック」、「表情のこわばり」、「眼瞼下垂」、「吹き出物」

・その他の疾患

「自律神経失調症」、「鬱」、「多動性症候群」、「自閉症」、「甲状腺機能亢進症」、「橋本病」、「シェーグレン症候群」、「関節リュウマチ」など

これらの症状や疾患は、噛み合わせとはまったく関係ないように思われますが、噛み合わせの治療をすることで治る場合もあり、噛み合わせが人間の身体のバランス(ホメオスターシス)の維持に、非常に重要な役割を担っていることがわかります。

 width=左のイラストは、噛み合わせが悪いことによって顎だけでなく、首や頭蓋骨にまで変化が引き起こされることを示したものです。

下の左側のイラストは、正常な顎と骨格の位置関係、および筋肉の名称を示したものです。右側のイラストは、噛み合わせが悪く、顎が後ろに下がったために、顎周囲の筋肉が緊張し、骨格の位置関係や骨格自体に異常を起こしている状態を表しています。

「茎突舌骨筋」が緊張することによって「舌骨」の位置が後ろに下がり、気道が狭くなります。「胸鎖乳突筋」が強く緊張することによって、「側頭骨」が下に引かれ頭蓋骨が変形してきます。

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「側頭骨」の中には「聴覚器官」が入っているため、「側頭骨」を含めた頭蓋骨の一部が変形することによって、「聴覚異常(耳鳴りなど)」や「平衡感覚の異常(めまいなども含む)」を起こす場合があります。

また、後頭部についている「上頭斜筋」、「小後頭挙筋」、が緊張することによって「環椎(第一頚椎)」、「軸椎(第二頚椎)」が後ろに引っ張られるため、頚椎のソリが「リバースカーブ(逆ゾリ)」になります。この異常なソリによって、頚椎の中を通る脊髄が圧迫されると、手足や内臓にまで異常が起こることがあります。

そして、頭蓋骨の後下部も下に引かれることによって「後頭骨」を含めた頭蓋骨が下側に変形し、脳の一部が圧迫され、思考にまで影響が出ることがあるのです。

さらに、「肩甲骨」と「舌骨」の間にある「肩甲舌骨筋」と「胸鎖乳突筋」が緊張することによって、「肩甲骨」が前上方に引き上げられ、「鎖骨」と「胸骨」は後上方に引き上げられることによって「胸郭」が狭くなり、呼吸がしにくくなります。

顎周囲の筋肉が緊張することによって、さまざまな骨格に影響がでることを考えると、噛み合わせが悪いことによる顎関節症は全身にも深刻なトラブルを引き起こす場合があります。


※治療結果は患者様によって個人差がございます。