監修医師
歯科医師 古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
お口の開閉で口が開けにくい、顎が痛い、顎から変な音がする場合、顎関節症かもしれません。顎関節症について調べるうちに、ボトックス注射という治療法を知った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そもそも顎関節症とはどんな病気なのか、ボトックス注射とはどのような治療法なのか、など詳しく解説します。
公開日:2025/05/30 更新日:2025/06/24
歯科医師 古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
・顎関節症の主な症状は「お口が開けにくい」「顎が痛い」「顎関節から異音がする」などです。
・さまざまな要因により顎関節症になります。
・ボトックス注射は顎周囲の筋肉の緊張を和らげる効果が期待でき、顎関節症の改善が期待できます。
・ボトックス注射は基本的に保険適用外となり、1回3万円ほどの費用がかかります。
顎の関節や周辺の筋肉に異常が起こっている状態が顎関節症です。主に「お口が開けにくい」「顎が痛い」「顎関節から異音がする」といった症状が出ます。
誰にでも起こりうる病気で、少し症状がある程度であれば病院を受診しない人が多いです。自然に治ることもあります。しかしながら、治療せずに放置すると、肩こりや頭痛が起こる、食べ物を満足に噛めなくなる、気分が憂鬱になる、お口がほとんど開かなくなる、といった症状が出る可能性があります。
顎関節症を引き起こす原因は一つだけではありません。従来は噛み合わせの異常によって起こるものと考えられていましたが、歯ぎしり、食いしばり、頬杖、左右どちらかに偏った咀嚼の癖、過剰な力での咀嚼、筋肉の凝りなど、さまざまな要因で顎関節症になります。患者さんによって原因が異なるため、治療前の原因特定が大切です。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質を成分とする薬を、顎の筋肉に注射する治療法です。一般的な内服治療、スプリント療法、外科的療法で顎関節症の改善がみられなかった場合などにボトックス注射が行われることがあります。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質を成分とする薬を、顎の筋肉に注射する治療法です。一般的な内服治療、スプリント療法、外科的療法で顎関節症の改善がみられなかった場合などにボトックス注射が行われることがあります。
ボトックス注射は筋肉の緊張を和らげる効果が期待でき、顎関節症の改善を目指せます。また、歯ぎしりや食いしばりを軽減する効果も見込めます。効果が出るのはボトックス注射をしてから1週間ほど経った頃で、個人差はあるものの約3~6ヶ月、効果が持続します。
顎関節症の改善に役立つボトックス注射ですが、以下の点に注意が必要です。
ボトックス注射の効果および持続期間には個人差があります。はじめから十分な効果を期待するのではなく、少量から治療を開始して徐々に増量し、最も効果が見込める投与量や注射部位を見つけることが大切です。
妊娠中または妊娠している可能性がある方、授乳中の方はボトックス注射を受けられません。また、全身性の筋力低下を起こす病気がある方、ボトックス注射でアレルギーが出たことがある方なども治療を受けられないため注意しましょう。
ボトックス注射後に、注射部位の腫れ・赤み・痛みや、体がだるくなる副作用が出ることがあります。多くは一時的なもので自然と治ります。ただし、症状が長引く場合や、吐き気、物が飲み込みにくい、けいれんなどの症状が出た場合、すみやかに担当医に相談しましょう。
歯科医院でのボトックス注射は、以下のような流れで行われます。
まず、歯科医師が症状やお悩みなどを丁寧に伺います。また、筋電計を用いた検査などで口腔内の状態を確認し、ボトックス注射の適応可否を判断します。
注射箇所が決まれば、ボトックス注射をします。痛みが出にくい細い針が用いられるため、基本的には麻酔なしで行われます。施術は数分で終わり、そのまま日常生活を送れます。ただし当日の入浴や激しい運動は控えましょう。
一般的に施術後1週間くらいで効果が徐々に出現しはじめ、3~6ヶ月程度持続します。定期的にボトックス注射を実施すれば、より効果を持続させることが可能です。
ボトックス注射にかかる費用は、基本的に公的保険適用外です。自由診療となるため、費用は歯科医院によって大きく異なります。費用の目安は1回3万円ほどです。
2025年4月 株式会社メディカルネット調べ
医療費控除とは、1月1日から12月31日までに支払った医療費の合計が基準額を超える場合に受けられる所得控除です。本人だけでなく、生計を一にする家族の医療費も含めることができます。
ただし、見た目をきれいにするだけの矯正治療など、審美目的の治療費は医療費控除の対象となりません。歯科のボトックス注射に関しては、歯ぎしりや食いしばりなどの治療目的であれば医療費控除の対象に含まれます。事前に歯科医院や税務署に確認しておくと安心です。
→医療費控除について詳しくは矯正歯科の医療費控除についてを参考になさってください。
顎関節症は「お口が開けにくい」「顎が痛い」「顎関節から異音がする」などの症状が出る病気です。原因は一つでなく、さまざまな要因が絡み合って発症すると考えられています。
顎関節症の治療法の一つであるボトックス注射は、一般的な内服治療、スプリント療法、外科的療法を受けても症状改善がみられない場合に実施されます。筋肉の緊張を和らげる作用があり、症状緩和が期待できる治療法です。
ボトックス注射に興味がある方は、歯科医師に相談してみましょう。この記事で、顎関節症の治療法であるボトックス注射への疑問や不安が少しでも解消されたら幸いです。
顎関節症は「お口が開けにくい」「顎が痛い」「顎関節から異音がする」などの症状が出る病気です。原因は一つでなく、さまざまな要因が絡み合って発症すると考えられています。
顎関節症の治療法の一つであるボトックス注射は、一般的な内服治療、スプリント療法、外科的療法を受けても症状改善がみられない場合に実施されます。筋肉の緊張を和らげる作用があり、症状緩和が期待できる治療法です。
ボトックス注射に興味がある方は、歯科医師に相談してみましょう。この記事で、顎関節症の治療法であるボトックス注射への疑問や不安が少しでも解消されたら幸いです。