監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
「歯並び(噛み合わせ)を改善するためにインビザラインによるマウスピース矯正治療を検討している。治療費が高く二の足を踏んでいる。医療費控除が受けられ、治療費が安くなる話を聞いたけど、それって本当?」そんな疑問をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
インビザラインでの治療に医療費控除が適用されるかは、治療目的で変わります。今回、医療費控除の適用条件、医療費控除で戻ってくる金額の計算方法、医療費控除を申請する時の3つの注意点、申請時の3つのステップを紹介します。
公開日:2025/09/12
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
・インビザラインでも、噛み合わせの改善などが目的であれば医療費控除を受けられる。
・装置代、バスや電車の通院交通費は控除対象になるが、金利やガソリン費用などは対象外。
・所得や支払額によって還付額は異なるが、確定申告により数万円戻るケースは多い。
確定申告の医療費控除では、1年間において支払った医療費が基準金額(基本的に10万円)を上回った場合、手続きによって、納めた税金の一部が還付されます。
治療費が合計10万円以上または所得総額の5%以上(年収が200万円以下の場合に適応)のうち、より少ないほうの金額が適用です。
また、仮に確定申告で手続きを忘れても、5年前までなら遡っての申告が可能です。そのため、これまで医療費控除を知らなかった場合も、過去の医療費負担を減らせるかもしれません。
→確定申告の医療費控除とは具体的にどのような制度なのか、歯科矯正の費用はそもそも医療費控除の対象になるのかは『歯科矯正は医療費控除を使える?条件や対象になる費用を解説』の記事をご覧ください。
参考:国税庁
医療費控除の適用条件を満たせば、インビザラインの矯正治療でも医療費控除の利用は可能です。この項目では、医療費控除を受けられる具体的な条件を、小児矯正と成人矯正の2つに分け、詳しく解説します。
歯列矯正に医療費控除が適用されるかは、治療を受ける患者さんの年齢や、治療を受ける目的等、歯列矯正が必要と認められるかによって変わってきます。
小児矯正は、歯並びや噛み合わせの悪さを改善し、子供の成長への悪影響のを目的に行われます。機能改善が主な小児矯正にインビザラインを利用する場合、医療費控除対象の可能性が高くなるでしょう。
成人矯正も小児矯正と同じく、歯列矯正で噛み合わせの改善が必要なら、医療費控除を受けることが可能です。
一方で、審美面のみの改善を目的として歯列矯正を受ける場合に関しては、医療費控除の対象とはなりません。インビザラインの治療に際して医療費控除を受けられるか否かは、医師に確認しておきましょう。
インビザラインによる矯正治療を受けると医療費控除によって税金が還付されますが、医療費控除額は計算でき、計算式に自分の経済状況などを当てはめます。
実際の計算式は、「1年間で支払った医療費」から「保険金などで補填される金額」と「10万円または所得総額の5%のうち少ない額」を引き算した数字が、医療費控除額です。そして、医療費控除額に所得税率を掛け算した数字が、最終的な還付金額です。
例えば、患者さんの総所得が300万円で、インビザラインが25万円だった場合、総所得額の5%は15万円で、10万円を上回ります。そのため、「10万円または5%の少ない方」の10万円が差し引かれます。
医療費の25万円から10万円が差し引かれた額、すなわち15万円が医療費控除の対象額で、所得が300万円の場合の所得税率10%が15万円に掛け合わせ、1万5千円が還付されます。
参考:国税庁
医療費控除対象費用と、ならない費用があります。この項目では、医療費控除の対象費用と、対象外の具体例を紹介します。
医療費控除の対象になる費用の具体例には、医師や歯科医師による診療・治療費、インビザライン製マウスピースや保定装置費用・調整費用、歯科医院の処方薬・市販薬の費用、公共交通機関を利用した際の交通費などが含まれます。
また、小児矯正の場合は患者さんだけでなく、患者さんの保護者が付き添うことが多いため、親御さんの公共交通機関の交通費も医療費控除の対象となります。
治療を始めてからの費用以外に、治療前の診断費、レントゲンなどの精密検査の費用、治療後のチェックなども医療費控除の対象となります。
医療費控除を検討しているのであれば、上述した費用と通院日を逐一記録しておくことをおすすめします。
医療費控除の対象となる交通費は、公共交通機関のものに原則限られます。そのため、自家用車で通院した際のガソリン代や駐車料代は、医療費控除の対象になりません。
また、デンタルローンや分割払いを利用した際に発生した金利や手数料のような追加費用も、医療費控除の対象とならないので注意しましょう。
インビザライン矯正治療で医療費控除を申請する際には、いくつかの注意点を頭に入れておく必要があります。医療費控除の手続きの際に意識すべき点は、以下の3種類です。
医療費控除の申請には、医療費控除に関わる全ての領収書を5年間にわたって保管する義務があります。
医療費控除の申請タイミングで実際に領収書を提出する必要はありませんが、控除に際して税務署から領収書の提示を要求された際に応じる必要があるため、領収書をなくさないようにしっかりと管理しましょう。
インビザラインの治療期間の目安は1~3年であり、長期間にわたって治療が行われることが多いです。支払いが年をまたぐケースも少なくありません。
治療が年をまたぐ場合、1度の申請で医療費控除を終えることはできず、両方の年に10万円を超えたら医療費控除の申請がそれぞれ必要です。申請に備えて、あらかじめ領収書を年ごとに分けておくことを心がけるとよいでしょう。
医療費控除の対象となるのは自分の治療費だけではなく、同居家族の医療費も合算可能です。自分一人では1年間の医療費が10万円に満たない場合も、家族と合算して10万円を超えていれば、医療費控除を受けられます。
また、合算して申請する場合、最も所得の高い人が申請することで、より多額の還付を受けられます。
インビザラインによる矯正治療で医療費控除を申請する際、いくつかのステップを踏みます。具体的には、以下の3つの手続きを順番に行い、医療費控除を受けられます。
医療費控除を受けるためには、あらかじめ必要書類を準備しておく必要があります。具体的には、自分や家族が支払った医療費の領収書と明細、矯正治療費の領収書、支払い証明書などを歯科医院から受け取っておきましょう。
また、医療費控除は確定申告の中の控除の1つのため、医療費控除を申請する年度の源泉徴収票、マイナンバーカード等、確定申告に必要な書類を用意しましょう。税務署のHPなどを検索すると詳しい説明が掲載されています。
必要書類を用意し終えたら、次は「医療費の明細書」を作成しましょう。明細書には医療機関の名称、受診日、治療内容、支払った医療費の内訳といった情報を記載していく必要があります。紙でなく、インターネット経由(e-Tax)でも提出できます。
加えて、インビザラインでの矯正治療の費用、公共交通機関の交通費、家族の医療費など、医療費控除対象費用を記入します。書類は税務署等でも入手が可能です。事前に準備すると良いでしょう。
医療費控除の明細書を作成し、最後に確定申告書の作成・提出をします。確定申告書には所得金額や控除額、医療費控除額など記入が沢山あります。
確定申告書の書類作成は絶対必要なく、国税庁ホームページにアクセスしオンラインでの提出も可能です。
一人で作成できるか不安な場合、確定申告時期以外なら税務署に足を運べばすぐに記入・提出方法を教えてもらえるため、できる限りスムーズに作業を進められるように早めに相談しましょう。
インビザラインでの矯正治療で医療費控除適用かどうかは、治療目的によって変わります。噛み合わせなど口腔機能の改善が目的で矯正治療を受ける場合は医療費控除の対象となりますが、見た目の改善が目的の場合は医療費控除の適用外です。
医療費控除対象となる費用は治療費だけでなく、公共交通機関の費用も含まれ、デンタルローンの支払いに伴う金利などは控除の対象になりません。医療費控除を受けられるかどうかは歯科医師の判断もポイントになるため、確定申告で医療費控除の利用を検討している場合、まずは歯科医院で相談してみることをおすすめします。