大人の矯正に抜歯は必要?後悔しないための矯正ガイド

大人の矯正治療は抜歯が必要?

そう不安に感じる方は多いのではないでしょうか。一見、歯を抜くことなく歯並びを整える「非抜歯矯正」の方が優れているように感じますが、抜歯矯正では前歯を後ろに下げて口元が引っ込ませることができるなど、仕上がりの美しさや噛み合わせによっては一概にそうとは限りません。

抜歯をするとどのように口元が変化するのか、今回は「抜歯矯正」を解説します。

公開日:2023/10/16  更新日:2023/10/20

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

矯正 抜歯

■目次

  1. 抜歯は矯正治療に必要?その理由とは?
  2. 実際に抜歯するのはどの歯?費用は?
  3. 抜歯が必要な3つのケースとは?
  4. 歯の大きさと顎の大きさのバランスが悪い場合
  5. 歯の大きさと顎の大きさのバランスが悪い場合
  6. 上下の前歯が突き出ている場合
  7. 上下の顎のズレが大きい場合
  8. 非抜歯矯正の落とし穴、歯を抜かないとどうなる?
  9. 非抜歯矯正で後悔する?ゴリラ顔になる可能性も
  10. 非抜歯矯正で後悔する?ゴリラ顔になる可能性も
  11. これなら非抜歯矯正ができるかも?3つの解決法
  12. 奥歯を後ろに移動させる
  13. 歯列の幅を拡げる
  14. 抜歯後の5つの注意点
  15. 抜歯した箇所を触らない
  16. 強い力での歯磨きやうがいは避ける
  17. 運動・入浴・喫煙は控える
  18. 食事は麻酔が切れてから
  19. 処方された薬はきちんと飲む
  20. まとめ
  21. 記事監修

抜歯は矯正治療に必要?その理由とは?

テスト

結論、矯正治療を受ける患者さん全員が抜歯を必要とするわけではありません。

一方で、歯並びや噛み合わせなど患者さんの目指すゴールによっては、抜歯が必要と判断されることもあります。なぜ、矯正治療は抜歯が必要になることがあるのかについて、詳しく確認していきましょう。

例えば、出っ歯や受け口などで口元が出ている印象をガラリと変えたい場合や、叢生(そうせい)とよばれるガタガタの歯並びや八重歯がある場合は、抜歯して空いたスペースに歯を移動させる治療が一般的です。特に出っ歯の方が抜歯で前歯全体が後ろへ下がると、横顔のバランス(Eライン)が整い、見た目の印象が大きく変わります。

歯並びや噛み合わせが悪くなる原因は「遺伝」や指しゃぶり、頬杖などの「生活習慣」「骨の発達障害」「歯と顎の大きさのアンバランス」など、さまざまな原因が挙げられます。特にアジア人は顎が小さく奥行きが狭いため、歯がガチャガチャと重なって生える傾向があります。

成長期の子供であれば、顎の骨の成長をコントロールして歯並びや噛み合わせを整える「小児矯正」が可能です。顎の大きさや歯が生える位置を理想的な位置に誘導しやすく、一般的に歯を抜く必要もありません。

ただし、成長期を過ぎた子供や大人の場合は、既に顎の骨の成長が完了しており、顎の成長をコントロールできません。結果、歯並びや噛み合わせを整えるために歯を並べるスペースを確保する手段として、抜歯が必要になることがあります(骨格的不正が強ければ顎を動かす外科手術が必要なこともあります)。

実際に抜歯するのはどの歯?費用は?

一般的に抜歯の対象となる歯は、前から4番目の第一小臼歯、または5番目の第二小臼歯のどちらかです。多くのケースで合計4本の上下左右の小臼歯を抜歯します。

上か下の2本だけ抜歯することや、片側だけ1本抜歯するなど稀なケースもあります。遠方や身体的事情などで通院回数を最小限にしたい方は、1度か2度で複数本まとめて抜歯できるか担当医と相談すると良いでしょう。

また、小臼歯以外の歯を抜歯するケースがあります。親知らずを抜歯してスペースを作り、全部の歯を後ろへ移動させる方法もよく行われます。歯の神経をとって被せ物をしているような健康の歯に比べて寿命が短い歯を代わりに抜歯することもあります。

矯正治療にともなう抜歯は便宜抜歯といわれ、特に健康である歯であれば公的医療保険適用外です。自費診療のため、1本あたりの抜歯費用の相場は5,000円~10,000円程度です。

2023年10月 株式会社メディカルネット調べ

抜歯が必要な3つのケースとは?

抜歯 必要なケース

矯正治療においては、どのようなケースで抜歯が必要となるのか。抜歯が必要な理由とともに、3つのケースをご紹介します。

歯の大きさと顎の大きさのバランスが悪い場合

矯正治療では歯を移動させるためのスペースが必要です。歯の大きさに対して顎が小さい場合は歯を正しい位置に並べるためのスペースが足りなくなり、抜歯が検討されます。

抜歯をしないで矯正治療を進めても歯はきれいに並ばず、無理に並べると全体的に歯が横や前に拡がって出っ歯になります。

歯の大きさと顎の大きさのバランスが悪い場合

矯正治療では歯を移動させるためのスペースが必要です。歯の大きさに対して顎が小さい場合は歯を正しい位置に並べるためのスペースが足りなくなり、抜歯が検討されます。

抜歯をしないで矯正治療を進めても歯はきれいに並ばず、無理に並べると全体的に歯が横や前に拡がって出っ歯になります。

上下の前歯が突き出ている場合

上下どちらかの前歯が大きく前に突き出ている場合、歯を後ろに移動させる必要があります。前歯を後退させるための大きなスペースを作るにあたって、抜歯を行うケースがあります。

上下の顎のズレが大きい場合

出っ歯や受け口などで上下の顎が前後に大きくズレているケースでも、抜歯が必要です。場合によっては外科手術も検討されるでしょう。

前に出ている歯を抜歯矯正によって後ろに移動させることで、前歯の噛み合わせを整えることができます。

非抜歯矯正の落とし穴、歯を抜かないとどうなる?

抜歯しない デメリット

矯正治療に抜歯がなぜ必要なのか解説しましたが、どうしても抜歯したくない方は歯を抜かない「非抜歯矯正」の方が優れているように感じるかもしれません。

抜歯の必要があるにもかかわらず非抜歯にこだわり、歯を抜かないで矯正治療を進めてしまうと、以下のような不満が出るかもしれません。そのうえで抜歯をするかどうかを考えてみてはいかがでしょうか。

非抜歯矯正で後悔する?ゴリラ顔になる可能性も

歯を抜かない「非抜歯矯正」のメリットは、健康な歯を失わないことです。歯は大切な臓器の一部といっても過言ではありません。できるなら長持ちさせたい気持ちもわかります。ですが、抜歯をしないことでどのようなデメリットがあるのかも確認してみましょう。

歯が生えるスペースが狭くても、歯を前や横に出して幅を拡大することで、歯を並べるスペースは確保できる場合があります。しかし、無理に歯並びを拡げると、将来的に歯茎が退縮しやすくなるほか、歯並びや噛み合わせが安定せずに後戻りが起こる可能性があります。

また、きれいに並んだとしても、歯が前に出過ぎて口元が膨らんだゴリラのような横顔になるかもしれません。これではEライン(横顔で鼻先と顎先を結んだ線と口元の関係性)が悪くなってしまい、見た目に不満が残るでしょう。
以上から、歯を抜かずに歯並びを整えることは一概に良いとは言えないことが分かります。

非抜歯矯正で後悔する?ゴリラ顔になる可能性も

歯を抜かない「非抜歯矯正」のメリットは、健康な歯を失わないことです。歯は大切な臓器の一部といっても過言ではありません。できるなら長持ちさせたい気持ちもわかります。ですが、抜歯をしないことでどのようなデメリットがあるのかも確認してみましょう。

歯が生えるスペースが狭くても、歯を前や横に出して幅を拡大することで、歯を並べるスペースは確保できる場合があります。しかし、無理に歯並びを拡げると、将来的に歯茎が退縮しやすくなるほか、歯並びや噛み合わせが安定せずに後戻りが起こる可能性があります。

また、きれいに並んだとしても、歯が前に出過ぎて口元が膨らんだゴリラのような横顔になるかもしれません。これではEライン(横顔で鼻先と顎先を結んだ線と口元の関係性)が悪くなってしまい、見た目に不満が残るでしょう。
以上から、歯を抜かずに歯並びを整えることは一概に良いとは言えないことが分かります。

これなら非抜歯矯正ができるかも?3つの解決法

非抜歯矯正 方法

顎の大きさや歯並びの状態にもよりますが、少し前後的にずれている、隙間が空いているなど、比較的軽度な歯並びの悪さであれば、歯を抜かずに矯正治療を受けることも可能です。

例えば、前歯の軽度な傾きやねじれの改善が必要であれば、前歯のみに矯正装置をつける「プチ矯正(部分矯正)」などが当てはまります。抜歯を行う以外のスペース確保の方法3つを紹介します。

奥歯を後ろに移動させる

一番奥歯から順に後ろに移動させることで、歯が移動できるスペースを作ります。ただし、親知らずが生えている場合は、親知らずを抜いてから奥歯を動かす方法が多いです。

歯列の幅を拡げる

歯が生えている歯列の幅が狭い場合、矯正装置により歯列の幅を拡げることで歯を並べるスペースを確保できる場合があります。

歯の表面を薄く削る

歯の表面のエナメル質という層をわずかに削って隙間を作る方法です。「ディスキング」や「ストリッピング」「IPR」ともよばれています。

抜歯後の5つの注意点

抜歯後 5つの注意点

抜歯後は出血や痛みがあり、細菌感染にも気をつけなければなりません。注意して過ごさないと治りが遅くなり、痛みが何週間も続くこともあります。以下、抜歯後の5つの注意点をご紹介します。

抜歯した箇所を触らない

抜歯した箇所には血が溜まり、「血餅(けっぺい)」とよばれるかさぶたが形成されます。血餅には出血を抑える役割があるため、強くうがいするなどして剥がれないように注意しましょう。

血餅が剥がれてしまうと、強い痛みが生じる「ドライソケット」という状態になる可能性もあります。抜歯した箇所は指や舌で触ったりしないよう注意が必要です。

強い力での歯磨きやうがいは避ける

強い力で歯磨きをした場合も、血餅が剥がれてしまう可能性があります。お口の中の汚れが気になる場合や、歯磨き後にお口をゆすぐ場合などは、頭を動かして水をお口の中にゆっくり行き渡らせるようにしましょう。強いぶくぶくうがいもNGです。

抜歯した箇所を刺激しないように意識して過ごすことが大切です。

運動・入浴・喫煙は控える

血流が促進されると、抜歯した箇所の出血がひどくなる可能性があります。抜歯した日は、湯船に浸からずにシャワーで済ませるようにしましょう。ただし、腫れや痛みがある場合にはシャワーも控えます。また、運動や飲酒によっても血流は促進されるため、抜歯した日は安静に過ごすようにしてください。

そのほか、喫煙は血流を悪くし、抜歯した箇所の治りを遅らせてしまいます。担出来る限りタバコを控えましょう。

食事は麻酔が切れてから

抜歯をされる際は局所麻酔が用いられ、数時間は麻酔の効果が持続します。麻酔が効いている間はお口の中の感覚が鈍り、誤って頬や唇を強く噛んでしまう恐れがあります。新たな傷を作らないためにも、麻酔の効果が切れるまでは食事を控えましょう。

処方された薬はきちんと飲む

抜歯後に抗生剤や鎮痛剤が処方された場合には、用法・用量を守って忘れずに飲むことが大切です。鎮痛剤については「服用間隔を○時間以上空けるように」などの担当医の指示を守って飲むようにしてください。また、薬が体に合わない、痛みが止まらないと感じた場合には担当医に相談しましょう。

まとめ

なるべくなら歯を抜きたくない、抜歯は怖いし痛そう、歯を抜いたら後悔しそう、などが皆さんの本音ではないでしょうか。歯は一生の財産です。なるべく健康な歯を残したいのは歯医者さんも同じです。

矯正治療においては、場合によって歯を抜いたほうが患者さんのためになるケースがあることをご理解ください。抜歯するかしないかで、仕上がりのイメージが変わります。

ご自身がイメージするゴールにできる限り近づけられるように、納得のいく矯正治療を担当医とよく相談なさってくださいね。

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