矯正治療で歯根吸収が起きた場合のリスクとは?主な原因や治療法も解説

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矯正治療は歯並びが改善されますが、一方でリスクがあり、「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」というものです。矯正治療時の歯根吸収の特徴や健康上のリスクを詳しく解説します。

監修医師

歯科医師 古川雄亮先生

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 歯根吸収とは?
  2. 矯正治療で歯根吸収が起きた場合のリスク
  3. 矯正治療時に歯根吸収が起きる主な原因とメカニズム
  4. 矯正治療の有無に関わらず歯根吸収が起きやすい人
  5. 歯根吸収の有無は画像診断で確認できる
  6. 矯正治療で歯根吸収が起きた場合の治療法
  7. まとめ

歯根吸収とは?

歯根吸収とは、歯の根っこが短くなるということです。口を開けたときに見える歯の白い部分は「歯冠(しかん)」といい、歯肉に埋まっている見えない部分が「歯根(しこん)」です。

歯根吸収は矯正治療で歯が移動することで歯根の一部が吸収されて短くなることで起こります。治療の途中に大きな歯根吸収が起きた場合は一時的に治療を中断することがあります。

矯正治療で歯根吸収が起きた場合のリスク

矯正治療における歯根吸収は割とよく起こることで、矯正治療を受けている患者さんの約70%以上にレントゲンで歯根吸収が見られるという報告があります。ただし、その多くが1~2mm前後歯根が短くなるといわれ、歯の予後に大きな影響を及ぼすほどではありません。

しかし、人によっては著しく歯根吸収が進むケースがあります。重度の歯根吸収が起きた場合、歯がグラグラと揺れ始めるおそれがあるため注意が必要です。
歯が動揺すると食べ物を噛みにくくなるほか、最悪の場合は歯が抜けてしまう可能性があります。

治療期間中に大きな歯根吸収が見つかったら、これ以上吸収が進行しないようにするために2~3ヵ月ほどは歯に力を加えないようにする、治療計画を改めて検討する(中止する)などの対策を講じる必要があるといえます。

参考:岡山大学 矯正歯科

矯正治療時に歯根吸収が起きる主な原因とメカニズム

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歯根が短くなってしまう「歯根吸収」は、なぜ矯正治療中に起きやすいのでしょうか。矯正治療時に歯根吸収が起きる原因やメカニズムについて、主な理由を見ていきましょう。

矯正力が強すぎる

矯正治療時に歯根吸収が起きる主な原因として、矯正力が強すぎることが挙げられます。矯正力が歯に加わり、歯根膜という歯周組織に接している歯槽骨に変化が起こります。歯が動く方向(力がかかる方)の骨が溶けていき、反対側は骨が作られていきます。

これを繰り返すことで歯が動くのですが、この新陳代謝のようなメカニズムが正しく起こるためには、歯に適切な力を加えなければなりません。加える力が強くなりすぎてしまうと、歯根吸収の原因となり得ます。

ジグリング

歯の動かし方にはさまざまな種類があります。主に歯は傾斜しながら「ジグリング」して移動します。

ジグリングとは歯を左右にわずかに傾けながら動かすことをいい、少しずつ動きます。これによって歯根の先端に力がかかり、歯根吸収のリスクが高くなるといわれています。

歯の移動距離が長い

矯正治療によって歯が動く距離は、個人差がありますが1ヵ月で約1mm前後です。矯正治療では歯を少しずつ動かしていくため、長期間にわたって行われるので患者さんにも根気強さが求められます。

もし、抜歯などで歯を大きく移動させなければならない場合、ジグリングの回数が多くなり歯根にかかる負荷が大きくなります。特に長い距離を短期間で移動させるような処置を行うと歯根吸収のリスクがより高まります。出っ歯や受け口のように、歯を大きく動かす必要があるケースでは注意が必要です。

アレルギーを持っている

アレルギー疾患を持つ患者さんが矯正治療を受けた場合、歯根吸収のリスクが高くなるという報告があります。九州大学におけるアレルギー疾患モデルのラットを用いた実験では、炎症性サイトカイン(破骨細胞分化促進因子)の発現量が増加したとあります。

参考:KAKEN

矯正治療の有無に関わらず歯根吸収が起きやすい人

患者さんの歯の形態などによっては歯根吸収が起きやすい場合もあり、例えば歯根が曲がっていたり、円錐状になっていたりすると、歯根吸収のリスクが高くなります。

また、歯を強打するなどのケガをしたことがある場合、歯根膜が傷ついている場合も、歯根吸収が起きやすいと考えられます。

歯根吸収の有無は画像診断で確認できる

歯肉より下の部分で進行する歯根吸収ですが、歯根吸収が起きているかどうかはレントゲン検査である程度判断することができます。

矯正治療を始める前の検査で既に歯根吸収が生じているかどうかがわかります。なんらかの理由で歯根吸収が生じている場合は、そのまま矯正治療を開始するとさらに進行する可能性が高く、矯正治療ができない、治療方法が限られることもあります。

特にレントゲン撮影は矯正治療による歯根吸収を発見するために重要な検査といえるでしょう。

矯正治療で歯根吸収が起きた場合の治療法

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もし、矯正治療中に歯根吸収が生じたら、どのような対応になるのでしょうか。矯正治療を継続できるのでしょうか。

経過観察

程度の軽い歯根吸収の場合は、経過観察となることが多いでしょう。通院している歯科医院で定期的にレントゲンを撮影しながら様子見となるケースが多いです。

著しく歯根吸収がみられた場合、歯に力をかけることをやめ、歯根への負担を減らすために2~3か月ほど矯正治療を中断することがあります。

抜髄

内部吸収(歯の内部にある歯髄(神経が通っている管)側から歯根が吸収されること)による歯根吸収の場合は、歯髄という神経を取り除く抜髄(ばつずい)という処置が行われることがあります。抜髄は局所麻酔を行い、炎症のある歯髄を取り除きます。

抜歯

重度の歯根吸収の場合は抜歯が検討されます。または歯根に形態異常が見られる場合や将来的に歯根吸収が予見できる歯根形態の場合は、矯正のための便宜抜歯をその歯にすることも検討されます。

参考:公益社団法人 日本矯正歯科学会

まとめ

歯根吸収は矯正治療において起こりやすいリスクの1つです。軽度の場合は自覚症状が少なく経過観察となることが多いものの、重度となると歯が抜けやすくなってしまったり最終的に抜歯を検討されることもありますが非常に稀です。
矯正治療を受ける際の参考になれば嬉しいです!

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