mmさんの相談

カテゴリ:装置・治療法

長期間動かない歯 犬歯

歯の矯正を初めて3年近く経つんですが、上顎の犬歯が動きません。CT検査もしたのですが骨性癒着の可能性は無く亜脱臼を去年の12月にしました。それからワイヤーとゴム掛けで様子を見てほんの少しだけ動きはありましたが、そこから全く動きがありません。自分で触っても他の歯に比べて動揺がありません。先生ももう少し様子を見ましょうと言うだけでゴム掛けとワイヤーでの治療しか行っていません。このまま動かない場合はどうしたら良いのでしょうか。

初めまして、マロニエ矯正歯科クリニックの栗田です。
ご質問にお答えいたします。

上の犬歯が動かないということですが、最初から動いていないか、途中から動かなくなったのかどちらでしょうか?
どちらにせよ、数か月単位で動いていないとなると、何らかのトラブルが生じていると思います。
また、骨性癒着に関してはCTで確定診断することは出来ません。

まず、矯正治療は破骨細胞という骨を壊す細胞が歯槽骨を壊すことでスペースを作り、動かします。
基本的には歯に力をかければ歯と骨の間にある歯根膜が圧迫され、破骨細胞が活動し、歯が動きます。
なので、矯正治療でなくても歯を押し続ければ歯は動くものです。
歯が動かないということは、歯と骨が癒着しているか、歯を動かす経路で何かに引っかかっているかです。

骨性癒着(アンキローシス)というのは、歯と骨がくっついてしまっている状態で、
矯正治療前からそうである場合と、矯正治療中に突然そうなる場合があります。
レントゲンや触診などでは判別が出来ず、動かしてみないとわからないのが難点です。
そして、くっついてることが問題なのではなく、歯根膜が存在しないのが問題なのです。
歯根膜の中に破骨細胞が存在しているので、歯根膜が無い骨性癒着では歯が動きません。
亜脱臼して一時的に動いたものの途中で動かなくなったとなると、やはり骨性癒着の可能性が高いです。
「動揺が無い」というのがほぼ確定診断となりますので、おそらく骨性癒着しているのでしょう。
歯は歯根膜があるので少し動きます(生理的動揺)し、矯正治療中は動揺しやすくなっています。

この場合、シングルトゥースオステオトミーという、動かない歯の周囲の歯槽骨に切れ込みを入れ、
歯と周囲骨が一緒になって動くようにすれば動かせるとされております。
ただそれも、途中で骨がくっついて動かなくなることはありますし、複数回外科処置を行う可能性があります。
なので、確実とは言えず患者さんの負担も大きいので骨性癒着歯は抜歯することもあります。
事前に判明していれば、健全歯ではなく骨性癒着歯を選択して抜歯して矯正します。
今回はすでに健全歯を抜歯したうえで犬歯が骨性癒着してしまったということなので、
犬歯を抜歯した部位には矯正治療後にブリッジやインプラントなどの補綴処置を行うことになります。

もう一つは、歯は歯槽骨の中を動かしていくことになりますが、歯槽骨から歯根が飛び出しそうになっていたり、
皮質骨などの硬い骨に当たっていてたりすると、歯が動かなくなります。
この場合、歯自体は動くので動かなくする原因から歯を遠ざければ歯が動くようになります。
具体的にはブラケットをつけ直したり、ワイヤーを曲げたりして歯根を動かして避けさせます。
尋常でない力をかければゴリ押しで歯を動かせないことも無いかもしれませんが、
歯根吸収を起こしたり、歯髄壊死を起こしたりするリスクもあるので、動けばいいというものではありません。

また、数か月動かなくても同じ治療を繰り返していたら動くことはあり得ます。
医学的な表現ではありませんが、歯が動きたくないのでしょう。
気の長い話ですが、歯はそもそも速くは動かず、矯正治療も長期間かかるものです。
一定の速度で動くものではありませんし、一時的に歯の動きが悪くなることはあります。
それでも数か月は長いですし、亜脱臼している時点で担当医は骨性癒着を疑っていると思いますが。
あとは、歯が動いていても患者さんが動いていないと思い込んでいることはよくあります。
犬歯を引っ張って、前歯と犬歯の間にスペースが開いていくと動いているのだとわかりますが、
犬歯とともに同時に前歯が動いてる場合はそのスペースは変化しません。
1か月に1ミリ動くかというのが歯の動きですから、頻繁に見ていても変化は感じられません。

考えうるものを挙げましたが、おそらく骨性癒着でしょう。
担当医はなぜか認めていないですが、骨性癒着でなければ亜脱臼をしようとは思いません。
当院でも、質問者様と同様に骨性癒着している患者様が数名いらっしゃいます。
外科処置で強引に動かした人もいれば、抜歯して補綴してもらう方もいます。
待っていてもどうにもならないどころか他の歯への反作用が生じて矯正治療的に状況が悪化します。
また、誤診かどうか、抜歯後の補綴の場合に費用はどうするかなど、矯正歯科医師的に認めたくない気持ちもわかります。
力をかけてまったく状況が変わらない(むしろ悪化する)場合は、何か解決策を投じるべきでしょう。
スペースが閉じきって咬み合わせが良くなるまで矯正治療は終わりに出来ませんから、
少しでも治療期間を短縮するためには、そろそろ様子見をやめる時期かもしれません。
患者さん側は自分でどうすることも出来ませんから、担当の先生と相談をしましょう。

以上を、ご質問への回答といたします。よろしくお願いいたします。
  • mm(26歳 女性 )
  • 2024年05月27日21時14分
最初から動きはなく亜脱臼してようやく動き出した感じです。
歯科矯正の先生と口腔外科の先生が触った感じだと他の歯に比べて動揺は少ないが全く動いてない感じでは無いそうです。
あと自分的に動かない犬歯が他の歯に比べて長くて太い気がするのですがそのせいもあって動きが鈍い事もあるんですかね?
上の犬歯は根っこが最も長く太いので、他の人も同じです。
ゆえに、他の歯が無くなっても最後まで残りやすく、よほどのことが無ければ上の犬歯は抜歯しません。
骨性癒着はそのよほどのことに含まれますので、小臼歯を抜く前に判明していれば犬歯を抜いたでしょう。
ブラケットをつけて歯が動揺するかを確認する以外に骨性癒着かどうかを判別する方法はありません。
前述のように、骨性癒着の患者さん数名に出会って失敗してからは、私はあやしいと思った歯がある場合にはすぐ抜歯せず、
ちゃんと歯が動くのかどうかを確認するようになりました。それ以来、骨性癒着で失敗することは無くなりました。

最初から動かずに亜脱臼を選択するまでに2年以上経過しているのは担当医の気が長すぎましたね。
ほんの少しでも動揺があるならば動くはずです。動いている気がしているだけかもしれません。
過去の写真と比較して犬歯が動いているかどうかを確認してみても、犬歯以外の歯が動いて犬歯が動いているように見えるだけかもしれません。
現状、亜脱臼して動いてから動かなくなっているなら、また外科処置が必要と思われます。
今度は亜脱臼だけでなく、コルチコトミーも同時に行った方が効果が高いかもしれません。
積極的に訴えかけないと行動しない先生かもしれないので、早くより効果的に治療を進めたいと考えるならもっとしっかり治療が進んでいないことを訴えかけた方がいいかもしれません。

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