噛み合わせに重度の障害をお持ちの方で
矯正治療だけでは治らないと診断された場合、
外科手術を伴う外科的矯正治療を行う必要があります。
外科的矯正治療は矯正治療のみで治療するよりも、
治療期間が長くなる場合があります。
今回は3Dデジタル矯正システムを使用し、
短い矯正治療期間で、できる限り患者様の負担を少なくする、
新しい外科的矯正治療を解説します。
新しい外科的矯正治療とは
上下の顎の位置に著しいずれがある骨格性の不正咬合を顎変形症と言います。
顎変形症には、顎の見た目だけでなく、食べる、話すといった機能面にも問題が生じます。
矯正治療だけでは安定した噛み合わせに改善することが難しいため、外科手術で顎の位置や大きさを治療し、矯正治療で歯並びを改善させます。
新しい外科的矯正治療は、従来の外科的矯正治療よりも治療期間を短くする「サージェリー・ファースト(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)」に、デジタル矯正システムを併用した治療法です。
デジタル矯正システムを併用することで、外科手術後の矯正治療期間の短縮を目指すことが可能になります。
3Dシミュレーションによる外科的矯正治療
最新のデジタルテクノロジーを駆使した「デジタル矯正システム」は、歯科用CTや口腔内スキャンしたデータを、コンピュータ内に出力します。3Dで可視化された口腔内モデルを用いて治療の工程をより詳細にシミュレーションすることが可能です。歯、歯根、顎の骨の内部まで可視化されるため、問題となる点が分かりやすいのも特徴の一つです。外科手術後の顎の骨の位置をシミュレーションし、手術後の矯正治療後の正しい歯並びと噛み合わせになるように、顎の位置を調整し患者様一人ひとりに合った治療計画を立てます。
また、3Dデジタル矯正システムでは、このデータを使用して外科手術を行う際に顎の位置を決める固定装置を3Dプリンターで出力し作製します。
従来の外科的矯正治療との違い
外科的矯正治療は外科手術を行うため、従来の矯正治療のみの場合と比べると身体への負担が大きくなります。手術には1週間ほどの入院が必要になり、会社や学校を休まなければならない方もいます。また、手術後は上顎と下顎をワイヤーやゴムなどで固定するため、一定期間は口が開けられない状態が続きます。顎まわりが腫れる可能性が高く、腫れが治まるまでに時間がかかる場合もあります。これらの理由により、外科的矯正治療を受けたくても治療開始時期を決めることが難しく、治療に踏み切れない患者様もいます。しかし、サージェリー・ファーストは術前矯正を軽減した外科的矯正治療であり、従来の外科的矯正治療と比べて治療期間を短くすることが可能です。
従来の外科的矯正治療とサージェリー・ファースト(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)の違いには、治療の流れが大きく異なります。
従来の外科的矯正治療
外科術前に矯正治療を行い、手術後の骨の位置で歯が噛み合うように歯のみを動かします。次に、外科手術を行い顎の骨を正しい位置に改善します。術後は矯正治療を行い、安定した正しい噛み合わせに仕上げていきます。
サージェリー・ファースト
(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)
術直前に矯正装置を装着して最初に外科手術を行います。外科手術により顎の骨の位置が改善され、骨格性の問題は改善されます。ただし、歯並びや噛み合わせは改善していない状態となるため、術後に矯正治療を行い正しい噛み合わせに仕上げていきます。
治療の流れ、治療期間
従来の外科的矯正治療の流れ
- 術前矯正(約1年〜2年程度)
噛み合わせを想定して歯を動かす為、
一時的に噛みづらくなる場合があります。 - 外科手術、入院
- 術後矯正(約6ヵ月〜1年程度)
- 保定・メインテナンス(数年)
※症状や手術の規模、抜歯、非抜歯により治療期間は異なります。
デジタル矯正システムを併用した
サージェリー・ファースト
(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)の流れ
- 手術準備
当院では、前日にブラケットを装着します。 - 外科手術、入院
当院では入院を必要としない場合もあります。 (下顎のみの手術の場合、入院を必要としない"Day Surgery"を行うことがほとんどです) - 3Dデジタル矯正システムでシミュレーション
治療完了後の歯の位置を設定します。 - 術後矯正(約6ヵ月〜)
正しい位置に歯を動かします。 - 保定・メインテナンス(数年)
※症状や手術の規模、抜歯、非抜歯により治療期間は異なります。
治療のメリット、留意点
従来の外科的矯正治療
メリット
- 公的医療保険が適用されるため、治療費の自己負担が少ない
留意点
- 外科手術を行うため、身体への負担が大きい(手術後の入院期間が長い)
- 矯正治療のみで治療するよりも、治療期間が長くなる傾向がある
- 公的医療保険適用により、治療法などの技術に制限がある
デジタル矯正システムを併用した
サージェリー・ファースト
(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)
メリット
- 従来の外科的矯正治療よりも、治療期間が短くなる場合がある
- 最初に外科手術を行うため、顎の骨の問題が改善され治療の最初の段階で見た目が良くなる
- 入院が必要ない場合が多い
- 裏側矯正を選択でき、見えにくい矯正治療が可能
留意点
- 外科手術が公的医療保険適用外であるため、治療費は自己負担になる
- 外科手術後に、噛み合わせが一時的に不安定になる場合がある
デジタル矯正システムを併用した
新しい外科的矯正治療の症例をご紹介します
下顎前突 - 受け口、下顎が上顎より前に出ている状態
治療概要
デジタル矯正システムを併用したサージェリー・ファースト(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)
導入技術
デジタル矯正システム+サージェリー・ファースト(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)+表側矯正
治療期間
10ヵ月
下顎骨がおおきく前方に成長したことによる骨格性の下顎前突症例です。下顎の骨を後ろに移動させることで、横顔の改善を行う治療方針が採用されました。先ず、手術の直前に矯正装置を装着しました。次に、歯を動かす前に外科手術を行い、下顎の骨を後方に移動させました。外科手術後、高精度カスタムワイヤーで矯正治療を開始し、おおよそ6ヶ月で手術後の矯正治療が終了しました。
下顎前突+開咬- 受け口で前歯がかみ合わず開いている状態
治療概要
デジタル矯正システムを併用したサージェリー・ファースト(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)
導入技術
デジタル矯正システム+サージェリー・ファースト(術前矯正を軽減した外科的矯正治療)+裏側矯正
治療期間
1年
重度の前歯部開咬と下顎前突の治療をご希望され来院されました。外科手術の前日に上下裏側の矯正装置を装着しました。下顎のみの外科手術のため手術後の入院が必要ない"Day Surgery"を採用しました。裏側矯正をご希望されましたので、手術後は表側に目立たないようにゴムをかけてもらいかみ合わせの調整を行いました。外科手術後約1年で、抜歯した隙間も閉じることができ、非常に短期間で治療を終了することができました。
当院は「トータルフィー制度(治療費総額制)」
を採用しています
トータルフィー制度は、最初に治療費を総額で提示し治療計画よりも治療期間が長引いてしまった場合も、総額は変わらず追加費用が発生しない治療費総額制のことです。毎回の調整料や、精密検査料、保定装置の料金は治療費に含まれておりますので、治療費が支払えるのかを心配される方でも納得して治療を受けていただくことが可能です。初回のカウンセリングは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。