矯正治療のゴムかけ(顎間ゴム)に期待できる効果とは?ゴムかけをサボるリスクも

ゴムかけ 矯正

歯科医院で矯正治療の相談をした際、「治療中にゴムかけを行う可能性がある」と言われ、「ゴムかけって何?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ゴムかけの効果、必要のないケース、ゴムの種類、対応歯並び(噛み合わせ)、装着をサボった場合に起こるリスク、注意ポイント4つをわかりやすく解説します。

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 矯正治療のゴムかけとは
  2. 矯正治療のゴムかけの役割・期待できる効果
  3. 歯を効率的に移動させる
  4. 噛み合わせの調整
  5. 矯正治療のゴムかけが必要ない人はいる?
  6. 矯正治療のゴムかけの種類&対象となる歯並び
  7. Ⅱ級ゴム|出っ歯
  8. Ⅲ級ゴム|受け口
  9. 垂直ゴム|開咬
  10. 三角ゴム・台形ゴム|開咬や矯正の仕上げ
  11. クロスゴム|交叉咬合(こうさこうごう)
  12. 矯正治療のゴムかけをサボった場合のリスクは2つ
  13. 矯正期間が延びる
  14. 納得の行く結果を得られなくなる恐れがある
  15. ゴムかけで失敗しないための4つの注意点
  16. ①正しいかけ方を覚える
  17. ②1日1回は新しいゴムに交換する
  18. ③予備のゴムを常に持ち歩く
  19. ④食後は必ずかけ直す
  20. 矯正治療のゴムかけに関するよくある質問と回答
  21. Q1. ゴムかけはいつから始まるのですか?
  22. Q2.1日のうちゴムかけは何時間必要ですか?
  23. Q.3.ゴムかけは痛みがありますか?
  24. まとめ

矯正治療のゴムかけとは

ゴムかけ 矯正

矯正でに使うゴムは、治療専用の輪ゴムで、ゴムの特性を活かして、歯を効率的に目的の位置に移動させるために用いられます。

矯正にはさまざまな治療方法があり、ゴムかけはマルチブラケット(ワイヤー)矯正とマウスピース矯正のどちらも使用されます。

歯を動かす際に大きな役割を果たすのはあくまで矯正装置本体ですが、細かい歯並びや噛み合わせの調整のために追加で使用されます。

矯正治療のゴムかけの役割・期待できる効果

矯正治療のゴムかけはメリットがあります。矯正治療のゴムかけの具体的な役割・メリットを紹介します。

歯を効率的に移動させる

矯正治療のゴムかけの役割・効果として、歯の効率的移動が挙げられます。歯列矯正では歯を三次元的に動かす必要があります。ゴムかけによって、歯を動かすために力を追加で与え、細かい調整ができます。

このように、矯正用ゴムは歯を効率的に移動させられる時に利用されます。

噛み合わせの調整

矯正治療のゴムかけの役割・効果として、噛み合わせの調整が挙げられます。

歯列矯正の目的に、噛み合わせを正しくすることがあります。ゴムかけで歯の位置を細かく動かすことが可能になるため、噛み合わせの調整に有効です。

患者さんの歯列の状態に応じて、使用するゴムの種類やかけ方を変えることで、前歯の位置を変えて上下の歯を噛ませるといった目的に対応できるのもポイントです。

矯正治療のゴムかけが必要ない人はいる?

ゴムかけの際、患者さんの噛み合わせの状態に応じて、ゴムのかけ方や使用するゴムの種類を変えます。患者さんによっては、矯正治療のゴムかけが必要ないケースもあります。

治療前に噛み合わせがある程度良い状態にあり、ゴムかけによる歯の移動が必要ない場合などです。

矯正の目的が小さな隙間や軽度の歯並びの乱れの改善なども、ワイヤーやマウスピースだけを使い、ゴムかけを使用せずに治療を完了させることもできます。

矯正治療のゴムかけの種類&対象となる歯並び

矯正治療において利用されるゴムには複数の種類があり、患者さんに応じて変わります。ここでは、ゴムのかけ方の種類・対象歯並びの例を5つ紹介します。

Ⅱ級ゴム|出っ歯

Ⅱ級ゴムは、上顎の前歯と下顎の奥歯にゴムをかけ、上顎の歯を後ろに、下顎の歯を前に動かし、噛み合わせを調整するために用いられます。上顎の歯が必要以上に前に出ている、いわゆる「出っ歯」を改善するために利用されることが多いです。

Ⅲ級ゴム|受け口

Ⅲ級ゴムは、上顎の奥歯と下顎の犬歯にゴムをかけ、上顎の歯を前に、下顎の歯を後ろに動かすために用いられます。上顎の前歯よりも後ろにある下顎の前歯が上顎より前に出ている「受け口」を改善する目的で利用されます。

垂直ゴム|開咬

垂直ゴムは上下の歯に垂直方向に力がかかるようにゴムをかけるために用いられます。上顎と下顎の前歯の間に噛み合わせた時に隙間ができて、奥歯でしか噛んでいない「開咬(かいこう)」を改善する目的などで使用されます。

三角ゴム・台形ゴム|開咬や矯正の仕上げ

三角ゴムや台形ゴムは、犬歯や小臼歯(しょうきゅうし)にゴムをかけ、噛み合わせを細かく調整するために用いられます。三角ゴムの場合は三角形に、台形ゴムの場合は台形になるようにゴムを歯にかけます。

噛み合わせをより深くし、噛み合わせを緊密にしたり、開咬治療にも利用されることがあります。

クロスゴム|交叉咬合(こうさこうごう)

クロスゴムは、上顎と下顎の歯の噛み合わせが左右にずれる「交叉咬合」を改善するために用いられます。

上の歯の外側から下の歯の内側にゴムをかける「たすき掛け」によって歯を動かし、噛み合わせを正しくます。

矯正治療のゴムかけをサボった場合のリスクは2つ

ゴムかけをさぼってしまうと、複数のリスクが生じます。デメリットの具体例に、以下の2種類があります。

矯正期間が延びる

ゴムかけは矯正治療での歯の移動の微調整のために利用されます。ゴムかけの効果で歯を動かすことも治療計画に組み込まれており、食事と歯磨きを行う時を除く時間(1日20時間以上)、装着することが求められます。

ゴムかけを担当医の指示通りに装着しなかった場合、治療計画にズレが出て、歯が予定通りに移動しなくなるかもしれません。

歯が予定通りに動かなかった場合、それだけ矯正期間が長くなり、通院回数が増えて治療費増大にもつなが可能性が高くなる点には注意が必要です

納得の行く結果を得られなくなる恐れがある

ゴムの装着時間がサボって短かくなったりすると、目標の位置まで歯を動かすことができなくなってしまいます。

矯正治療は事前に治療計画を立て、治療を始めた時点で最終的な仕上がりもある程度予測されています。ゴムかけを行わないと歯の動きが鈍くなり、治療計画にもズレることになるため、最終的な仕上がりも当初の予定と異なってしまい、患者さんの納得いく治療結果を得られなくなる恐れがあります。

ゴムかけで失敗しないための4つの注意点

ゴムかけ 矯正

矯正治療の際にゴムかけを行う場合は、いくつかの注意点をあらかじめ頭に入れておくと安心です。この項目では、ゴムかけの最中に気をつけたほうがいい4つのポイントを具体的に解説していきます。

①正しいかけ方を覚える

ゴムかけの期間は、食事や歯磨きでゴムを外し、食後に患者さん自身で再度ゴムかけを行う必要があります。具体的なゴムかけの手順を紹介すると、矯正装置のフックにゴムを引っかけ、ゴムを伸ばしてもう一方のフックにゴムを引っかけます。

ゴムかけに慣れていない治療開始直後では、鏡を見て行うとよいでしょう。ゴムかけをスムーズに行う補助器具があり、ゴムかけが不安な人はこの器具を使う手もあります。

②1日1回は新しいゴムに交換する

矯正治療で使用されるゴムは、お口の中で常に引っ張られ、劣化スピードが早いです。1日でゴムの力が緩み始め、1日に1回ゴムを取り替え、弾力のある新しいゴムを毎日使用していきます。

使用するゴムの種類や、ゴムの使用状況に応じて交換タイミングが変わるため、担当医の指示を守って適切にゴム交換を行うことが重要です。ただし、使用時間が短かったとしても、お口の中でゴムが切れたりした場合は、速やかに新しいゴムに交換しましょう。

③予備のゴムを常に持ち歩く

ゴムかけの最中に、お口の中で急にゴムが切れるケースがあります。家の中でゴムが切れた場合はすぐにゴム交換できますが、外出中にゴムが切れてしまった場合、替えのゴムがない可能性があります。

外出の際は速やかにゴム交換できるように、予備のゴムを持ち歩くことをおすすめします。ゴムかけできない時間帯があると、矯正治療の計画に悪影響が及びます

④食後は必ずかけ直す

ゴムかけの最中でも、食事中はゴムを外します。ゴムを外している時間が長くなると、歯が元の位置に戻ろうとする力が働き、ゴムかけの効果が低下します。

ゴムかけをサボらず後戻り、食事後はなるべく早くゴムを装着し、ゴムの力が歯にかかるように努めましょう。加えて、食事中にゴムを外す時はできるだけゴムを清潔に保つために、食後に新しいゴムに取り替えても良いでしょう。

矯正治療のゴムかけに関するよくある質問と回答

矯正治療のゴムかけに関するよくある質問と回答を紹介します。

Q1. ゴムかけはいつから始まるのですか?

A.ゴムかけのタイミングは患者さんの治療計画によります。治療初期の場合もあれば中盤に使うこともあります。

Q2.1日のうちゴムかけは何時間必要ですか?

多くのケースでは、ゴムかけを1日20時間以上することが求められます。食事や歯みがきのとき以外は、基本的に常に装着する必要があります。

Q.3.ゴムかけは痛みがありますか?

ゴムかけ開始直後は、歯が引っ張られる感覚や痛みを強く感じることがあります。痛みは数日ほどでおさまることが多く、徐々に慣れていきます。

ただし、強い痛みが続く場合や装着時の違和感が強いときは、無理に我慢せず、担当の歯科医に相談しましょう。

まとめ

矯正治療でのゴムかけは、歯の移動の補助に使われます。ゴムかけによって、歯を効率的に移動させ、噛み合わせを整えたりできるので、マルチブラケット矯正とマウスピース矯正の両方において用いられます。

患者さんの噛み合わせの状態によっては、ゴムかけが不要となるケースもあります。ゴムかけが必と判断された場合、治療計画に遅れが出ないよう、歯科医師の指示に従ってサボらずに、ゴムかけを続けましょう。

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