エコさんの相談

カテゴリ:時間と期間

裏側矯正について

2年半前から裏側矯正をしています。
抜き歯をしていて一年半ごろから動く気配がなく素人にはわからないが動いているのかと思っていたのですが、2年経っても隙間が埋まらず先生にいつ隙間は埋まるのか聞くと、ほんとだね動きが遅いねと言われ次の月に抜き歯の部分のワイヤーをとりパワーチェーンだけにすると急に動き出しました。
これって動かせるのに動かさずにいたのではないか?それとも適当にしていて言われるまであまり動いていないことに気がついていなかったのか?と不信感があります。
お金を払っているのに治療が適当だったのかと思い相談させて頂きました。
こういったことは普通にあるのでしょうか?

初めまして、マロニエ矯正歯科クリニックの栗田です。
ご質問に回答いたします。

裏側矯正で時間がかかっていて、その点を指摘したら治療法が変わった、
今までの治療が手抜きだったのではないかと疑問に思っているということですね。

まず、今までの治療が適当だったかはわかりませんが、
治療を進めることを質問者様が促したために、適当な方法に変わりました。
隙間を埋めればいいというわけではないので、適切でない方法になっています。
治療の最終段階であれば、パワーチェーンのみもありえない方法ではありません。

まず、裏側矯正の治療はとても時間がかかります。
様々な理由がありますが、抜歯矯正なら3年を超えることがほとんどです。
また、治療の中盤はスペースを閉鎖していく時期で、見た目の変化はほとんどありません。
質問者様が動いていないと感じつつも、治療は進んでいたと思います。
本当に治療が停止していたとしても、じっくり進めていくのが本来の状態です。
ダイエットで停滞期があるように、人体ですから矯正にも停滞期があります。
ダイエットに例えるなら、ゆっくりと体重を減らしていくのが安全なやせ方ですが、
体重が減らなくなったために、完全に断食してしまっている状態で、健康的とは言えません。

ワイヤー無しで治療が出来るなら、そもそもワイヤーが無い方が歯が動きやすいです。
物体は抵抗があると動きにくくなります。ブラケットとワイヤーで摩擦が生じるため、動きが遅くなります。
では、なぜワイヤーが必要かというと、歯を適切に平行移動させるためです。
歯の重心は骨の中にあり、骨の中の重心を押すことは出来ません。
生えている部分を押すと、歯が倒れこんでしまいます。歯が倒れるとまともに咬み合いません。
また、歯が捻じれたり、変な方向に移動したりしてしまいます。
歯が計画通りにちゃんと動くように、ワイヤーをレールとして動かしているのです。
レールがあると摩擦が生じますが、仕方がないことです。
新幹線よりもリニアモータカーの方が速いですが、矯正はレール無くして出来ないのです。
本来はワイヤーがある状態で治療をしないと歯並びがめちゃくちゃになります。
なので、ワイヤーを外してパワーチェーンのみにするのは、「雑な治療」になったということです。

おそらく、ワイヤー無しで歯を動かしたので、歯並びや咬み合わせはずれたはずです。
そのずれを治すために、またワイヤーを入れることになり、リカバリーに数か月かかります。
もちろん、担当医もそれをわかっていてやっていますが、停滞期を抜ける作戦としてはありです。
あとほんの少しのスペースだけ閉じれば終わる、という状況なら、良くやる方法です。
質問者様はまだその状態ではなさそうなので、このままパワーチェーンのみならどんどん悪くなります。
結局、あとでリカバリーをすることになって、治療期間の短縮にはならない可能性もありますね。
ただ、矯正治療は「咬み合わせが良くなるまでやる」ものであり、
隙間が閉じれば終わりではないので、仕方がないことかと思います。じっくりやりましょう。

のんびりしている先生や、何も考えていない先生も中にはいますが、
基本的にはほとんどすべての矯正歯科医師が早く終わらせたいと思っていますし、
そのために最大限頭を働かせて治療をしているはずで、わざと長引かせたりはしません。
長引くとクレームも増えますし、新規患者を増やせないので、医院の収入が下がります。
ただ、矯正治療というものがとにかく時間がかかり、急ぐことが出来ないのです。
今質問者様がやっている方法のように、スピード重視では必ずちゃんと治らずにツケが来ます。
最終的にちゃんと咬み合うまでが治療期間であり、時間で終わるものでは無いのです。
真っ当な先生と、下手な先生の治療は長くなります。
適当な先生と、上手な先生の治療は短くなります。
また、治療期間が延びるのは、装置の特性や、治療のプラン、患者さん自体の歯の動き安さに左右されます。
質問者様は、治療が早く終わらないストレスを担当医に向けていますが、
担当医がちゃんとしていない可能性もありますが、ちゃんとしてて順調で今の状態かもしれません。
いい加減な方法でいまいちな仕上がりで良ければ早く終えられますが、
正しい方法で、健康的でしっかりした仕上がりにするには時間がかかります。

矯正は時間がかかる、急いではいけない、という基本理念のもと、矯正歯科医師は治療をしています。
ただ、患者さんが治療を急がせようとした場合に、理念を崩さざるを得ない可能性もあります。
「ちゃんと治らないかもしれないけど、患者さんがイライラしてるからさっさと終わらせよう」
という思考になりがちです。矯正歯科医師も人間なので、焦らされると雑になります。
そもそも早く治るなら、早く治しているわけなので、気持ちはとても良く分かりますが、
担当医を急がせようとすると、ちゃんとしていない治療で適当に終わらせられる可能性があります。
担当医に関して不信感があるのであれば、ちゃんと話し合った方がいいでしょう。
早く終わりにしたいのか、ちゃんと治したいのか、考えたうえで話すといいと思います。

以上を、ご質問への回答といたします。よろしくお願いいたします。

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