出っ歯は指しゃぶりが原因?お口の癖やアデノイド顔貌について

出っ歯は指しゃぶりが原因?お口の癖やアデノイド顔貌について

お子さんの歯並びの乱れは日常の癖が原因かもしれません。指しゃぶりや口呼吸など、お子さんの日常の何気ない癖が歯並びの乱れや発音、お顔の筋肉や骨格の発育にも影響を与えることがあります。アデノイド顔貌についてもご紹介します。

監修医師

古川雄亮先生

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

目次

  1. 出っ歯は指しゃぶりが原因だった?子供の癖と歯並びのこと
  2. 指しゃぶり
  3. 口呼吸
  4. まとめ

出っ歯は指しゃぶりが原因だった?子供の癖と歯並びのこと

歯並びや噛み合わせの乱れは、歯や顎の大きさなど「遺伝が原因となっているもの」と、指しゃぶりや爪噛みなど「生活習慣が原因となっているもの」に分けられます。遺伝的な要因は避けられませんが、口の使い方や生活習慣に密着した癖から生じる歯列不正(悪い歯並び)は、お子さんご自身の努力や家族のサポートによって回避することが可能です。指しゃぶり、爪噛みなどの悪癖は「ただの癖だから」と放置せず、できるだけ早い段階で治すことが得策です。

以下が歯並びや噛み合わせに影響を与える生活習慣の一例と影響についてです。お子さんに当てはまる癖はないかチェックしてみましょう。

・ やわらかい食べ物ばかり好む → 顎骨の成長不足
・ 指しゃぶりや爪をかむ癖 → 開咬・上顎前突(出っ歯)・乱杭歯
・ いつも口を開けて息をしている、気が付いたらお口を「ポカン」と開けている → 出っ歯(口の中の乾燥を伴う)
・ ものを飲み込むときに上下の歯の間に舌を突き出す癖(舌突出癖) → 開咬

今回は「指しゃぶり」と「口呼吸」にフォーカスをあてて解説しています。

指しゃぶり

指しゃぶり

「指しゃぶり」のうち、最も多いのが親指をしゃぶる癖です。指しゃぶりの約50%は親指をくわえるといわれています。4歳までに指しゃぶりを卒業できれば、おしゃぶり癖によって生じた歯列不正(悪い歯並び)は自然と治るケースが多いようです。一方で歯や顎の発達時期と重なる5歳までに指しゃぶりを中止できなければ自然治癒が難しくなり、歯並びに悪影響を及ぼす可能性が高まるといわれています。
3歳までの指しゃぶりは許容範囲です。眠い時や何らかの不安を感じた時に、心を落ち着かせるための行動です。指しゃぶりの頻度や指を吸い込む強さに注意は必要ですが、すぐに止めさせる必要はありません。
指しゃぶりは成長と共に自然と卒業することが多いようですが、なかには5歳を過ぎても止められないお子さんもいるようです。このようなケースでは、指しゃぶりをしてしまう何か特別な理由が考えられます。場合によっては医師や歯科医師と相談しながらケアに努める必要があるでしょう。

指しゃぶりが与える影響
指しゃぶりは口腔機能の低下を引き起こし、結果的にお子さんの成長へ影響を与えかねない重大な問題です。以下にて、指しゃぶりが与える悪影響について解説します。

【お口ポカン 舌の癖がつく】
指しゃぶりを続けると、上下の歯の間に隙間があいてきます。すると、その隙間に舌を押し込んだり、飲み込む時に舌で歯を強く押し出すような癖が出てきます。気が付いたらお口がポカンと開いている、何かに夢中になっている時に無意識に舌で歯を押し出してしまう、このような癖を「舌癖」といいます。

【出っ歯・開咬になる、発音にも影響が!】
舌を前に突き出す「舌癖」が習慣化すると、上の前歯や下の前歯が前方に傾斜してしまう、いわゆる「出っ歯」などの歯列不正や、奥歯は噛んでいても前歯が噛みあってない「開咬」などの不正咬合を引き起こしてしまいます。
開咬になると唇や頬など口周囲の筋肉の付き方が弱くなり、外側から歯を抑える力が衰えてしまいます。口が閉じにくくなるので、気がつけば「お口ポカン」の状態に。いわゆる「締まりのない顔つき」になってしまうのです。また、話をするときに歯と歯の隙間に舌が入るので「舌足らず」な話し方になります。特に「サ」・「タ」・「ラ」行の発音が難しくなってしまいます。

口呼吸

口呼吸

口呼吸は、文字通り「口で呼吸をすること」ですが、身体への影響は大きく「お子さんの成長を阻害する悪癖」といっても過言ではないでしょう。口呼吸になる理由は様々ありますが、指しゃぶりも口呼吸を招く原因のひとつ。歯並びが乱れて唇が閉じにくくなると、鼻呼吸から口呼吸に変わってしまうだけでなく、アデノイド顔貌を引き起こす要因にもなりかねません。

そもそも、口呼吸はなぜ身体に悪いのか。口で息をすること=身体に悪いこと、そのように思う方は少ないと思います。以下にて「口呼吸」が与える悪影響について解説していきます。

虫歯になりやすく悪化しやすい
常に口を開きっぱなしの口呼吸は口の中が乾燥しやすく菌が繁殖しやすい状態です。そのため、虫歯になりやすいだけでなく悪化しやすくもなります。虫歯が悪化して早期に乳歯を抜歯する事態になれば、永久歯の歯並びにも悪影響を及ぼすことがあります。

アレルギーや喘息を誘発させる可能性
鼻呼吸は肺に空気が入るまで何層ものフィルターをかけて異物やウイルスが体内へ侵入を防いでくれています。一方で、口呼吸は鼻呼吸のようなフィルター機能はなく、冷たい空気が直接身体の中に入ります。その結果、風邪をひきやすくなるほか、慢性的なアレルギー疾患や喘息、アトピーを誘発する可能性があります。

クリアな発音ができなくなる
口周囲の筋肉が未発達であるとクリアな発音ができません。口呼吸は舌を上に持ち上げる筋肉が弱まるため、特に「サ」「タ」「ラ」行などの発音が困難になります。また、飲み込むときに舌で前歯を押すように飲み込む癖(舌突出型嚥下)がつくことがあります。そうなると、食事時に口を開きながら食べるようになり、ペチャペチャ音を立てるといった症状が出てしまいます。

アデノイド顔貌を引き起こす原因にも
口呼吸はお顔の筋肉や骨格の発育にも悪影響を与えます。口呼吸を続けると「アデノイド顔貌」と呼ばれる独特な顔つきや噛み合わせの原因となる場合があります。
一般的にアデノイドは2歳頃から自然と大きくなり5~6歳をピークに徐々に小さくなっていき、そして思春期の頃にはすっかり目立たなくなります。 しかし、何らかの原因によりアデノイドが極端に肥大し炎症が起こることがあります。
口呼吸の癖が抜けずにいると、やがてアデノイドが肥大したままとなりアデノイド顔貌と呼ばれる独特の顔つきになるため、口呼吸は早めに直したほうがよいといえるでしょう。

※アデノイドとは、鼻の一番奥で、ノドとの境目(上咽頭)の部分で「咽頭扁桃」とも言います。


【※アデノイド顔貌の特徴】
1.面長(おもなが)な顔
2.上顎、下顎の横幅が狭い、V字型をしている
3.上顎の前歯が前突している
4.上下の前歯の噛み合わせが浅い
5.前歯の歯並びがでこぼこ
6.唇がめくれて厚く、乾燥して荒れている
7.鼻が小さく狭く、鼻翼が平坦で鼻孔が小さい
8.上顎に対し下顎が後方位にある

★アデノイド顔貌についてこちらの記事も読まれています★
歯並びの乱れは呼吸にあり?アデノイド顔貌の原因と治療法

まとめ

歯列不正(歯並びの乱れ)や不正咬合(噛み合わせの乱れ)の原因は指しゃぶりだけではありません。近年はやわらかく食べやすい加工品が増えたことにより噛む回数が減り、舌や口の周りの重要な筋肉を鍛えることが少なくなったといわれています。その結果、鼻呼吸に重要な役割を果たす口の周りの筋肉が発達しにくくなり、結果的に口呼吸を招いてしまうこともあります。

歯の大きさや顎の大きさなどの遺伝的な要因は避けられませんが、生活習慣に密着した癖から生じる歯列不正は、生活習慣を見直すことで回避できます。身についてしまった習慣や癖は治そうと思っていても、すぐに正すことは難しいものです。子供のうちから正しい習慣を身に付けられるよう、保護者をはじめとした周囲の大人がお子さんの異変にいち早く気づいてあげることが重要です。

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