まりんさんの相談

カテゴリ:装置・治療法

歯列拡大について

  • 投稿者 まりん さん [43才 女性 ] 2022/07/02/ 07:24
  • カテゴリー 成人矯正 装置・治療法 治療中
  • お悩みの歯 上あご右6番 上あご右7番 上あご左6番 上あご左7番 下あご右6番 下あご右7番 下あご左6番 下あご左7番

私は、下顎より上顎の幅が狭く、上顎はワイヤーとゴムがけで広げています。クワドヘリックスは使っていないのですが、使う、使わないは先生の方針の違いなのでしょうか?嘔吐反応が強いので、使わないで治せるのならその方がいいのですが、広がるのか心配になってきました。少しは広がってきたのですが。それと下は奥歯が少し内向きになるとのことだったんですが、よくクワドヘリックスとバイヘリックスで上下どちらも歯列を広げてる方がいますが、それはどちらも歯列が狭い場合でしょうか?私みたいに下の方が歯列が広い場合は下の奥歯も起こし過ぎたら噛み合わなくなってしまうのでしょうか?

初めまして、マロニエ矯正歯科クリニックの栗田です。
ご質問にお答えします。

上下の幅が合わないため、上を拡げようとしている。
クワドヘリックスを使用しないでいいのか?
下を内側に倒しこんでいいのか?ということですね。
これは、「顎」と「歯」を別々に考える必要があります。
我々もとりあえず「顎を拡げる」という表現を使ってしまいますが、
質問者様はおそらく「顎の幅は狭いが、顎を拡げるべきでない」という状況にあります。


まず、顎の幅が上下で合わないことはあります。
これは生まれついてのもので、奥歯も交叉咬合という状態になります。
前歯も奥歯も上の歯が外側に来ているのが正常な咬み合わせですから、
上の奥歯を外側に動かしたり、下の奥歯を内側に動かしたりして改善します。
この時に、クワドヘリックスなどを併用したりします。

そもそも、顎が拡げられるのは成長期の子供のみです。
成人は骨の成長が止まっているので、基本的には拡がりません。
本来的には、小児期に拡大床・クワドヘリックス・急速拡大装置などを使用し、
顎骨に側方への力をかけて拡げていきます。
ただ、顎と言っていますが、実際は歯が埋まっている歯槽骨が拡がっています。
急速拡大装置に関しては、正中口蓋縫合が拡がり、顎骨自体が拡がっているとされていますが、
実際は75%ほどは歯槽骨が拡がっています。そうそう顎は拡がりません。
昨今では、アンカスクリューなどを併用して本当に顎骨を広げるような治療法が試されていたりします。

ある程度は、歯槽骨が拡がりますが、限界があります。
側方拡大の限界を超えて拡げようとすると、歯が外側に倒れこんで行きます。
外側に倒れこみすぎると、上下の歯の咬み合わせがうまく咬まなくなります。
よって、無理に広げると咬み合わせにとっては良くないということです。


では、成人で側方拡大を行うとどうなるのか。
ほんの少しであれば歯槽骨も広がることもありますが、ほとんど歯が外側に向いていきます。
前述のように、上下の咬み合わせが悪化するかもしれませんし、
歯が歯槽骨から飛び出していくことになるので、頬側の歯茎が減ってしまします。
年齢的に、質問者様は歯肉退縮もある程度起きていることでしょう。
無理な上顎側方拡大により、歯肉退縮が悪化するリスクがあるため、
担当している矯正歯科医師は積極的な拡大をしないのだと思います。

そうなると、交叉咬合を改善するためには、下の奥歯を内側に入れ込むことになります。
上が外側に傾きすぎると咬み合わせが悪化するように、下も倒しこみ過ぎはよくありません。
ただ、そう治すのが、歯肉退縮のリスクが低く、無理が無いということです。
多少であれば、歯が倒れこんでいても咬み合わせ的に問題はありません。
交叉咬合のままでいるよりも、少し歯を倒しこんだ方が良い咬み合わせになると判断したのでしょう。

その際に、上のアーチワイヤーを広げたり、下のワイヤーを縮めたりしますし、
上の歯の内側と、下の歯の外側にかけて交叉ゴムという顎間ゴムをかけたりします。
交叉ゴムはひっかけにくいですが、倒しこんで交叉咬合を治すのが得意です。
クワドヘリックスを使用していると、ゴムがかけられなくなったりするので、使用しないのかもしれません。


バイヘリックスを使うかどうかについてですが、
側方拡大の目的が、スペース確保のためなのか、幅の一致のためなのかで変わります。
幅の一致のためであれば、下を広げる必要はありませんし、
むしろ下が拡がってしまう分、上をもっと広げなくてはなりません。
若年者であれば、上下拡大をやることもありますが、
成人している場合は、たいして広がらない可能性もありますし、歯肉退縮のリスクも大きくなります。

なので、上下拡大を行うのは、そもそも交叉咬合の方ではなく、スペース確保のためです。
でこぼこや出っ歯の原因は、歯が大きかったり、顎が狭かったりしてスペース不足になっているからです。
抜歯などもスペース確保のために行いますが、側方拡大もスペース獲得方法のうちの一つです。
ネット上でクワドヘリックス・バイヘリックスを使用しているとある方たちは、
質問者様のような交叉咬合ケースではなく、非抜歯だけどなるべくスペースを作りたい、
もしくは抜歯ケースだけど、抜歯だけでもスペースが足りないから側方拡大も行っているパターンです。
歯並びの状態によって、やるべきことや使う装置は異なります。
拡げる→クワドヘリックスを使う→バイヘリックスも使う、と発想されたのだと思いますが、
質問者様でバイヘリックスを使うことはないでしょう。余計難しくなります。


側方拡大のやり方についても様々な方法があり、担当医の考え方や好みによっても左右されます。
40代の交叉咬合ケースにクワドヘリックスを使うかどうかというのは、意見が割れるところだと思います。
問題が無いと思われますので、現状の治療方法でうまく治ると思いますが、
「下の歯が内側に倒れるのが嫌だ」「上顎をちゃんと広げて治したい」
「上の奥歯が外側に傾斜して咬み合わせが甘くなるのが嫌だ」
ということであれば、方法が一つだけあります。

SARPEという方法を検索してください。成人に急速拡大装置を使うという方法です。
正中口蓋縫合が完全に癒合する前の小児期に使用するのが本来の急速拡大装置です。
成人でも歯槽骨ではなく、上顎骨自体を拡げようとするなら、口蓋の正中に切れ目を入れます。
もちろん、全身麻酔下で行いますが、外科処置後に急速拡大装置を使用すれば、
本当に「顎」が拡がりますし、上の奥歯も外に傾斜せず、下の奥歯も倒さないで大丈夫です。
なので、交叉咬合を「歯」を傾けて治すのではなく、「顎」を拡げて治すのであれば、
質問者様がやるべきはクワドヘリックスではなく、SARPEです。
「歯は傾けるべきでない、拡大は骨ごとやるべき」という考えの矯正歯科医師が好んで行います。
ただ、手術を併用となると大変ですし、質問者様もそこまで望んではないのではないでしょうか。


矯正治療のやり方は、いろんな方法があります。
矯正歯科医師の考え方や、能力、経験などにより、どれを選択するかが変わります。
また、ケースによっても治療法の向き不向きがあるので、すべての人に適応されるわけではありません。
クワドヘリックスを使用している人は、担当医がクワドヘリックス使う派で、適応症だっただけです。
現在担当している先生の考えがあるはずなので、一番は直接聞くことですね。
うまく治るか不安ということですが、治らなければ担当医も他の方法を試すと思います。
最初に決めたやり方で効果が出なければ、他のやり方に軌道修正してくれると思います。

以上をご質問への回答といたします。よろしくお願いいたします。
  • まりん(43歳 女性 )
  • 2022年07月04日20時31分
栗田先生、回答ありがとうございます。
SARPEではなく、MARPEを検討していたこともあったんですが、不安障害があり嘔吐反応も強く、急速拡大装置をつけるのが難しいため諦めました。先生も私くらいの狭窄だったら骨ごと拡大まではしないとおっしゃっていたので。ただ私は元々噛み合わせ悪いですが、虫歯治療から噛み合わせがおかしくなり噛めなくなり不定愁訴も出てきて色々調べるうちに歯列が狭いと舌の部屋も狭くなり、不定愁訴の原因となると言われていることを知り、引っかかっていました。噛めるようになればいいとは思っていましたが、ツィッターなどで調べ過ぎ、心配にもなってしまいました。担当の先生にもう一度よく聞いてみようと思います。ありがとうございました。
  • まりん(43歳 女性 )
  • 2022年07月04日21時12分
あともう一つ質問なのですが、私は軽度の開咬、出っ歯なのですが、骨から広げた場合と歯列のみの拡大で前歯を下げる量は変わらないですか?見た目は出っ歯感ないのであまり下げたくはないのですが、やはり歯列のみのだと後ろに下げるしかないのかなぁと思ってるのですが。
SARPEもMARPEも同じようなものですね。
クワドヘリックスもそうですが、矯正治療では固定式の舌側装置を追加することがあります。
嘔吐反射がある人でも、基本的には問題なく使用できます。
嘔吐反射の原因が何であるか、にもよりますが、必ず慣れますので。
もちろん多少の違和感はありますが、装置を入れたことでずっと気持ち悪く感じる人はいません。
嘔吐反射も、本当に強い人は型取りの際などにどうしようもなく即座に嘔吐します。
なので、口に物が入るのが苦手、型取りや写真が苦手、程度であれば問題ないでしょう。

不安障害、不定愁訴など、不穏な単語が出ていますが、心因性のものの可能性があります。
口腔心身症というのもすでに知っていらっしゃるかもしれません。
口腔内に特に問題が無くても、メンタル由来で口の中に違和感を感じることがあります。
本来は、クワドヘリックスや他の装置を使おうと担当の先生は思っていたかもしれませんが、
嘔吐反射を訴えかけたり、原因不明の不定愁訴を訴えたりして、質問者様の精神状態を鑑みて、
なるべく負荷の少ない方法で治療しようとしているのかもしれません。

本当に虫歯治療で咬み合わせがおかしくなったかもわかりませんし、
何かしらの矯正治療でもっとおかしくなった、などと言われると困ってしまいますからね。
開咬で、交叉咬合で、出っ歯であれば、昔からそもそも咬んでいないはずです。
歯科治療が原因で医原性に咬み合わせが悪化する可能性ももちろんありますが、
『「咬めない」と感じるようになった』というのは、まさしく口腔心身症です。
そのような人がネットで色々なことを調べようものなら、余計に不安になるだけです。
実際に治療をするのは担当の歯科医師ですので、正解はその先生が教えてくれます。
この矯正歯科ネットもそうですが、あくまで参考程度に捉えてください。


追加の質問にお答えいたします。
歯だけ外側に傾斜しても、歯槽骨だけ拡がっても、顎骨ごと拡がっても、
獲得できるスペースに差はありません。拡げた分だけスペースが作れるだけです。
そして、そもそも多少の拡大ではほとんどスペースは作れません。
前歯を下げたくない、ということですが、拡大ではほぼ下がらないでしょう。
開咬で、出っ歯ということですが、上下の前歯が接するのがゴールです。
下の前歯に合わせて上の前歯が下がってくるということなので、前歯が後退する量は決まっているはずです。
質問者様の希望とは無関係に、必要なだけ前歯が引っ込みます。

最初に、検査・診断を行い、どれだけ前歯を後退させるかの説明は済んでいるはずです。
最初に立てたプラン通りに治療を進めていくので、仕上がりは最初に決めてあるはずです。
治療途中で変更することも不可能ではないので、お気持ちとして前歯を引っ込めたくないなら、
治療が進んでいく前に、担当の歯科医師に伝えるべきでしょう。
「見た目の出っ歯感はない」というのは質問者様の主観であり、出っ歯度合いは数値化されているはずです。
もちろん、質問者様が納得する仕上がりにしていくべきではありますが、
治療開始前にちゃんと決めてあることを、治療が始まってから蒸し返す、というのは良くありません。

拡大の方法と前歯の後退量に関連はありませんし、そもそも前歯を引っ込めないと出っ歯は治りません。
色々調べたり、質問者様の意向もあると思いますし、診断への理解度もあるでしょうが、
「出っ歯の治療が始めっているのに前歯を下げたくないと言い出している」のは意味が分かりません。
検査・診断を終え、プランに同意して治療開始している人の発言とは思えません。
出っ歯を治すということは、前歯を下げるということです。でなければ前歯は咬みません。
出っ歯感が無かろうと、治療をすれば今よりも前歯が下がるということを受け入れましょう。
咬み合わせを良くするために矯正を始めたのに、咬み合わせが治らなければ意味がありません。

また、開咬を治すのはとても難しいです。なんとなく非抜歯矯正なのかなと思いますが、
「開咬・出っ歯・交叉咬合」を、「ワイヤー・非抜歯・追加装置なし」で治すのは難儀だなと思います。
交叉咬合を治すと、臼歯の接触状態が変化し、より開咬に、より出っ歯になります。
その状態を、抜歯せずに治すとなるととても難しいです。ひたすら顎間ゴムを使うしかないでしょうか。
アンカースクリューも本来は必要な気がしますし、そのために内側の追加装置も必要なんじゃないかと思います。
矯正治療に関する様々なストレスもありますが、質問者様はわりと難しいケースですので、
歯並びを改善していくうえで必要なことを色々やらないとうまく治らないかもしれません。
交叉咬合だけ治っても、開咬・出っ歯をどう治していくのか、その作戦を伝えられているかどうか。
もう一度、担当医と話し合う必要があると思います。
質問者様が今気にされていることはそんなにたいしたことでは無くて、
最終的にちゃんと治るのかどうか、ということの方が重要だと思います。
  • まりん(43歳 女性 )
  • 2022年07月05日07時25分
分かりました。回答ありがとうございます。ただ患者は不安を抱えています。プランに同意した人の発言とは思えないなどきつい言い方はやめてもらえませんか?前歯はそんなに下がらないとは説明受けましたが、どのくらい下がるかなどはっきりした説明は受けてないのできちんと聞いてみたいと思います。
 ご相談ありがとうございます。
 矯正装置について良くご存知ですね。患者様も装置について知っておかれることは大切だと思います。 
 歯列の拡大についてはクワッドヘリックスや下顎にはバイヘリックス、上下のゴムかけなどの他にもいくつか存在します。
 今、主治医の先生の判断によりゴムかけをされていてもし、効果が上がらない時は他の方法を主治医の先生にご相談されては良いかと思います。
 方法は一つではありませんし、主治医の先生も色々な方法を知っておかれることと思いますのでご安心してご相談して下さい。

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